COMITIA125良かった本まとめ
「高校生殺人事件」光物野晃太
かつて、怪鳥ひばりに跨りブレインダメージ系怪奇漫画を量産した川島のりかずという漫画家がいた。自らの精神を供物とし、自傷行為に近い形で産み落とされた排泄物はヒルコのような奇形児であり、川島自身の人間観・死生観がダイレクトに反映された自身の分身でもあった。余りのもチープゆえのディープさ、セイントだからこそ抱えられる矛盾だ。
川島が放ったブレインバーストは超低距離であるがゴク一部の人間にスーパークリティカルヒットを与えることに成功した。本作の元ネタである「中学生殺人事件(略して中殺)」はヤフオクやまんだらけ等の死の商人によってゴク稀に出品され10~20万円近い値段で取引されている。死亡説が根強い川島だがゴッホのような心境だろうか。成功ってなんだ?
前置きが長くなったが本作「高校生殺人事件」は「中殺」のパクリ、もとい、ビルドアップ版というべき優れた漫画作品だと思う。「中殺」が自身の不器用な発露だったのに対し、「高殺」はどこか根本敬や山野一のようなニヒルさが光っている。
「こんなんコミティアでウケるの?コミティアって九井諒子とかpanpanya、つくみずとかっしょ?」みたいな意見。ダマレシャラクサだ。
本来的にコミティアとは自由な創作の場所であって、エクストリームな表現が好まれるべきだ。それが近年「コミティアっぽいよね」という曖昧模糊とした比喩が実に通じやすいし、私も実際使ってしまう。優れた作品であれば如何なる作品でも解放されるのがコミティアのあるべき姿なのではないだろうか?「高殺」はぬるい空気を一蹴するバルサンのような破壊力がある。
「WORK OUT clothes」さかぐちまや(さかま屋)
人間は布を纏うことにより、より一層スケベになれるという特質を持った生物である。
上がピチTで下半身を露出しているプーさんに性的トラウマを植え付けられたという訓練された変態は別として、基本、布を纏うことは人間の尊厳だ。そして布は全裸よりはるかに強い。
精緻なデッサン(デッサンという言葉を使いたい)によって描かれた、肌の露出面積多めの女性は一言に言ってセクシーだ。所謂「手癖」で描くという傾向がコミティア界隈には強いが、さかぐちさんのソレは「お絵描き」ではなく「イラスト」だ。技術は尊い、そして、さかぐちさんのイラストはエッチだ。
「ひとを殺すゆめ」りつ(犬の一生)
荒い。荒いが絵にパワーがあると思った。何となく松浦だるまあたりを連想した。色気があるのだ。りつさんの絵柄は「咲」や「アイカツ」等のペドペドした影響が濃いのかなーという印象だったがコレはC-MOONだわ。
「水辺の怪談」というのも良い。遠藤周作と三浦朱門が伊豆で体験した「自殺者の幽霊の夢」を何となく連想した。水の記憶と死の記憶の相性はバツグンで艶っぽさまである。
「penitence to float in midair」YO!YO!洋次郎(漫画雑貨屋さんサークル)
コミティア&ザ・ニューパワージェネレーションを感じた。オッサンが管を巻いているが才能は勝手に育っていくのだ。オッサンはそれを見守る。
初の個人誌ということだが驚異的にセンスが良い。文字のレイアウトとか女の子の服装だとかいちいち洒落ているのだ。話もハインラインの爽やかなSFみたいな雰囲気で短いながらも「読んだ感」がある。フリーオールギフト。
「沖縄に夜の魚」たいぼく(おおきめログハウス)
実は俺、たいぼく先生の漫画は完全なオリジナルより旅行記モノのほうが好きなことに気づいた。だって普段、スリルしまくって「オタク死ね」みたいな雰囲気のたいぼく先生が健康的にキャピキャピと普通に旅行を満喫してるのって興奮しません?しない?
イイ旅行漫画=旅行をしたくなる漫画。本作の場合は食べ物がとにかく美味しそう。沖縄行きたい。でも、ナクヤムのパートはいらない。
個人的に沖縄という場所はビジュアライズする上でとてつもない可能性を秘めた場所だと思います。国家神道以前のゲニウスロキ、あるいは名前を失った神々を今も熱心に信仰している土地が他にあるだろうか?セーファやクボーのような御嶽(禁足地)の存在はソレの最たる例ですよね。ロマンと楽しいが詰まった地、沖縄。
「ちほちほ、二週間で退職する」ちほちほ(月刊滋養)
うつ→退職→障碍者認定→障碍者枠で再就職→2週間で退職(今ココ)
平山夢明が言ってるんだけど「無気力は狂いのはじまり」というのがある。
無気力とは決してローファイ、シャッグスなものではなく心の中でのカインとアベルの血で血を塗る抗争があるのだ。ちほちほさんの漫画は狂っている。
「生まれたばかりで走れない」ほとむら(htmr)
俺は自身のセンズリをかくルールとして「一定以上の肌を露出している」という条件がある。どんなにドスケベでも基準値を満たしてなければセンズリはかかない。ほとむらさんのイラスト(漫画)はその条件を満たしすぎている。俺は永遠に満たされない。だが、それでイイ。
「DODOITSU」TNSK(壁の彩度)
「アイドルスマッシュ」が終了したばかりのTNSK先生による超画力和服美人&どどいつイラスト本。凄いよ。
「にこらてすらのコピー本のまとめ本」ジョン・テンダ(にこらてすら)
テンダさん、久しぶりのオフセット本。女性が主人公の話が多く、ジョンテンが百合!?と一瞬思ったが媚びたところなど一切っっっなく、「節」としかいえない独自のジョン・テンダワールドが展開されている。やっぱり漫画力が高い。
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