ネココネコロガール

音楽の話題

本当に怖い漫画 外伝~押切蓮介~

今まで大好きだったものが、ある出来事をキッカケに大嫌いになってしまう...こういう体験ってないでしょうか?私の場合は押切蓮介がソレに当たります。

例の事件 ではなく、それより少し前に発売された「暗い廊下とうしろの玄関」というコミック幽に掲載された短編をまとめた作品集が決定打となりました。

 

 

 

 

彼岸島化&ヒャッハー&無双のループを繰り返し、希釈化した「夕闇特攻隊」、夕闇と大して内容が変わらず、ただ残虐なだけで哲学や魅力がない悪党をボコボコにするだけだった「焔の眼」、ゲームセンターCX的な友達の家でゲーム眺めてる感をコッテコテのラブコメと融合させた悪名高い「ハイスコアガール」と私の押切先生に対する不信感は日に日に高まっていました。

 

そして、本作。

本作は長期にわたって掲載されていた作品をまとめただけに、初期と終盤では絵も作風もだいぶ異なります。最初の方「不安の種」辺りを連想させる、都市怪談風の話が目立つのですが、終盤にかかるとやけに説教臭く、「コレ怪談?」と思ってしまうようないや~な雰囲気が充満してきます。

 

そして、極めつけは作者自身による解説です!

「心霊の類は信じていません」「心霊スポットに行く人間、怪談が下手な人間は愚か」「霊感のスイッチなどいらない」等、挑発的な解説の数々!

確かにそうかもしれませんが、それを言っちゃまずいんじゃないでしょうか?

んじゃ、未だに怪奇ホラーで食ってる(高橋)ヨウスケ先生、(伊藤)潤二先生なんかの巨匠はどう思われるでしょうか?成功することなく道半ばでくたばった好美のぼるいばら美喜なんかの別の意味での巨匠たちの無念も報われないですよ!(押切先生自身、貸本系ホラー作家からの影響を強く受けていることを語っています)

 

そもそも、「怪談」というのは「文化」です。泉鏡花ラフカディオ・ハーンが幽霊や妖怪を信じていたかどうかは知りませんが、彼らが暗闇の中で「いとあやし」な雰囲気を意図的に楽しむスキルを持っていたのは確かです。イマジネーションを駆使した知的遊戯、侘び寂との戯れ、「怪談」ってそういうものじゃないですかね!?

 

 

 

 

 

 

ドヒー! おばけが僕をペンペン殴る!

ドヒー! おばけが僕をペンペン殴る!

 

ここまで散々なことを吐かせていただきましたが、私はかつての押切作品の大ファンですし、特に初期の作品群は「スカムホラーの最新形にして終着点」ともいうべき得体の知れないパワーに満ち溢れています。「下手糞だけど何かを描かずにはいられない強迫感」に憑りつかれた作品の数々に思わずポカーンすること間違いなし。

 

 

 

f:id:youblewit1969:20150218183755j:plain

 名作「4444」 飛ばしまくりです。上空の血走った瞳は日野日出志リスペクトですね。

 

好美のぼる」、「いばら美喜」と言ったスカムホラーの巨匠から影響を受けたであろう不条理でぶっ壊れた世界観。先人達は独特の「おじいちゃんテイスト」っていうか「フォークっぽさ」っていうんでしょうか、まあ昭和臭いんですが押切先生の場合は湿気が強めで90年代~00年代前半に隆盛を極めた鶴田法男や黒沢清などの所謂Jホラーの影響も強く感じさせます。

 

 

 

 

 

カイキドロップ

カイキドロップ

 

 

そして、氏の最高傑作と自認してるのが合同誌「カイキドロップ」です。

押切先生を中心に、食えぬ仲である「清野とおる」、何かとイジられキャラの「佐々木崇」、「オガツカヅオ」、そして、かつて「太陽プロ」を率いて実に啓蒙的で素晴らしい貸本作品を連発された知る人ぞ知る伝説の漫画化「池川伸治」が新作を引っ提げての登場!!

カラー絵もかっこいいし、押切&清野のコラム漫画も面白い!そして何よりも池川作品が凄ェ!

現在、絶版で値段が高騰してますが一読の価値を保証します!

 

 

 

 

f:id:youblewit1969:20150218190029j:plain

御代の新作。大変に心地がよろしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:youblewit1969:20150218190134j:plain

 ベスト押切女の子キャラ「ありす」

黒目がちで矢鱈とキラキラしてる今の絵柄は嫌です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピコピコ少年SUPER

ピコピコ少年SUPER

 

 つい先日、発売されたばかりの「ピコピコ少年SUPER」において、例の騒動以降の氏の心境が綴られていて色々と思うところがありました。

氏は今の自分を「糞」と称されていますが私からすると、人気作家になったことによる金銭的な、あるいは配偶者を得たことによる「ある種の余裕」を強く感じました。

なんというか、埋めようのない隔たりを改めて見つめ直した一冊なのでした。