本当に怖い漫画10選 5~10
「呪われた巨人ファン」 城たけし
怪奇漫画ファン(特にスカムホラー)の間では伝説的な人気を誇る世紀の名作!これを読まずに死ねるか!
主人公のひろしは大の巨人キチ。ある日、水道橋で巨人VS阪神選を観戦するひろしだが、試合は掛布のサヨナラHRで巨人の負け。肩を下ろし帰宅するひろしだが、自宅で放送されていたスポーツニュースでは「巨人がサヨナラ勝ち」したとの報道が流れる!自分が観たのは巨人が負けた試合だ!ニュースは嘘つきだ!と疑心暗鬼に陥るひろし!そして、ひろしの奇行は徐々にエスカレートしていき....
とにかく訳が分からない不気味さが充満した作品です。意味不明な怪奇描写が挿入されたりとストーリーも作画も不条理極まりないです。必殺の魔球が大暴走して大炎上したような終末感....一応、ハッピーエンドっぽい終わり方をするんですが何とも形容しがたい消化不良感が残り最悪に凄いです。
「電気蟻〈吾が分裂の華咲く時〉」~新ナショナルキッドより~丸尾末広
中学生の時に古本屋で売ってたHOLY(角川書店刊)というホラーアンソロジーを呼んだ時に衝撃を受けたのがコレ。余りの恐ろしさに脂汗をダラダラ垂らしながら震えた記憶が今でも残っています。(手塚治虫や美内すずえ等の巨匠と一緒に載ってるのがタチが悪い)
んで、成人をとうに過ぎた今になって読み直してみますと、タイトルなんかもろに藤子不二雄A先生のオマージュだし(のちに浦安鉄筋家族の浜岡先生がオマージュを更にオマージュしたたりする)、無作為に挿入される工場や工業機械の赤錆臭さは同時代の塚本晋也や石井聰亙(岳龍)を連想させるインダストリアル&ブルータルなハードコア感に溢れています。こうしてみるとホラーというよりはクールな印象をとても受けます。
最近の丸尾先生ですが、乱歩や夢Qを漫画化した作品も悪くはないんですが私としては80年代後半のジャパコア感溢れる短編が好みです。
小学生の時のトラウマ漫画と問われれば間違いなく私は「ぬ~べ~」と答えます。
人体模型、A、花子さん、人食いモナリザなど後味が悪い話も多く、当時の学校の怪談ブームに上手く乗り大ヒットを生み出した作品と言えるでしょう。(逆に学校の怪談ブームを押し上げたとも言える)
個人的には「ブキミちゃん」以降からバトルやエロにシフトチェンジしすぎて低空飛行気味になってくるのが残念。初期の話はホントに怖い!
「夢幻紳士~怪奇篇~」高橋葉介
数多い葉介作品において最高傑作と断言できるのが、この怪奇篇です。
ブラックジョークやセルフパロディの多い氏の作品において、これだけは終始、幻想&耽美な空気に満ちていて不思議な倒錯感に襲われます。
私としましては美女の美しき自殺&鮮血の美学を描いた「夜会」と、”花火の幽霊”についての問答がお洒落で私的な「花火」が大好き。
「母さんが抱いた生首」川島のりかず
この最高にクールなタイトルとグレイトな表紙絵を見れば分かりますね!お母さんが生首抱えて発狂する話だよ!!
主人公のアヤは殺人現場を目撃してしまい、口封じに暴行され全身マヒの重傷を負います。んで、実のお父さんも交通事故で死んじゃう。不幸のスパイラルの中、お母さんに恋人ができます!んで、その恋人こそがアヤが目撃した殺人犯その人なのでした...
ツッコミどころ満載なガバガバ構成やスカスカな作画、残酷描写&発狂オチの連発からネタ漫画扱いされやすい川島のりかず作品ですが、精神的なインナースペースの暗部を描いた後期の作品群はどれも秀逸で川島自身の人間観というのが万遍なくにじみ出ています。
発狂投げっぱなしオチの多い氏の作品ですが本作の主人公アヤは発狂しませんし、路傍の花のようなある種の悟りのような感覚を得て話を終えます。素晴らしい。